先の記事への反応に関して

クラウドという言葉は定義が曖昧で広く拡大解釈が浸透されてしまったから、混同されるのはもうしょうがない」という意見もいただきました。それは自分的にはあまり賛同できないです。90年代からあるような形のレンタルサーバー的なものも「クラウド」として扱って、今回の件に限らず「そっか、クラウドといっても万能じゃないんだね」的な理解をされてもしょうがないということ態度にもなってしまいかねないので。

もちろん、クラウドは万能じゃないしクラウドに預ければ万事 ok という意味ではないですよ。そうではなくて、クラウドという話がされるよりずっと昔からあるものまで含めて「クラウド」扱いされて、その文脈で最近のビジネスやシステム動向までいっしょくたに扱われても問題ない、とまではさすがに大らかにはなれないなあと思ってます。

自分的には IaaS/PaaS はともかく SaaS まで含めて「クラウド」と言ってしまうと、もう何がクラウドか分からなくなるので微妙だなと思いつつ、別に EvernoteiCloud 的なものまで「クラウド」と呼ぶことをやめろとかとは言いませんし、そういう言葉の定義の話がしたいわけじゃないです。

レンタルサーバーのように具体的なシステムあるいは事業形態があって、それに対して進化した、明確に線引きができる異なる形態のシステム/事業であるところの AWSGoogle App Engine、Heroku、あるいは国内の複数 IaaS/PaaS サービスなどが存在する状況において、昔からある前者を「クラウド」と呼んで全部を一緒くたにする議論は、さすがに大ざっぱすぎるのではないか、と言ってるんです。特に今回のような、システム的な文脈で事件を扱っているような話の中で。それ以外にも、例えば、OpenStack 的な文脈でのパブリッククラウドプライベートクラウドの議論の中にレンタルサーバーの話をする人が入ってきて意志決定に絡み始めたら、面倒じゃないですか?

ユーザー視点でみたら、裏の技術がどうのこうのなんて関係ないというのは、その通りだと思います。一方、別にいまはユーザー視点で専門的なことは何も交えない文脈で話しをしているわけじゃないですよね。

まあ、自分のブログを見ていただいている方々は、ここを外すような方々ではないのであんまり声を大きくして言っても意味がないのかもしれないんですが・・・。

追記

もう一つ例え話。

2012年のいま、仮に自分がスタートアップでウェブサービスを提供するとしてインフラはどうしますか? という議論があったときに「いまならAWSとかその類のクラウドにします」「なんで?」「Instagramそのほかの事例とかを見ていても、数百万人以上の規模のサービスを数人で運営できたというのはクラウド基盤があったからというのは明白で、今レンタルサーバや自社データセンターを持ってそこに人的/運用コストを割くのはパブリックなウェブサービスを運営するのには必要ないかなと思います」みたいな話、ありますよね。この文脈とかにも明確にレンタルサーバーとクラウドの対比が、存在するじゃないですか。

そりゃあ、先のエントリの自分の書いたのは俺定義かもしれないけどみんな「レンタルサーバーとクラウドは違うと思う」と思うなら、そこには区別は存在しますよね。その区別をしないで、両者をいっしょくたにするような話はちょっとやだねと、とそういう話ですよ。格好つけて書きすぎたから、なんか微妙な空気になっちゃったかもしれないけど。

追記#2

途中にも書いたけど、強調しておきたいので追記します。

「そんなこと言ってもユーザー視点では/一般人には」というようなコメントもいただきましたが、今はその「ITリテラシがあまりない方」に関しては話の対象外だし、自分の母親に向かって「クラウド言うな」なんていう話は私もしてませんよ。日経新聞のテクノロジー欄に記事を投稿する記者は「一般人」なんですか?

少々後付けですが、いまの文脈は「ファーストサーバー社の障害を、ある程度システム的な文脈も交えて話そうとするなら」というところかなと思いますね。

全然そういう文脈じゃないところでクラウドという言葉を拡大解釈して使ったり、SaaSクラウドといったりというのは、そんなのは各個人の自由だと思います。やれやれ、とは思ってもそこまで釘を刺さなければいけないようなことじゃないと思っています。

なんだってそうですけど(僕はどこにそんな「一般的な人」がいるのか知らないけど) 仮にその "一般人" というのがいたとして、話の対象になってないその人たちを視野にいれたらもう何一つ専門的な言葉は使えなくなるし、議論だって単純化して話すしかないですから。そこまで幅広く対象に話したいなら、もっとちがう言い方、書き方をします。