"ウソが本当らしくみえればみえるほど、美しく見える"

美談だけどデマ。その是非については方々で議論されているので、ここでは問わない。

長年ネットをやっているとその手のテキストが目についたとき「うん?」と時折鼻が効く・・・という方も多いんじゃないでしょうか。自分も毎回とはいきませんが、そんな直感が働くときがある。

それっぽいものにでくわして毎度「いやあ、これは」と穿った視点で見てしまうのもなんだか心が貧しいなと内心思うのですが、それがデマだったりあるいは一方的な主張に塗れているのがわかったときには「ああ、やっぱり」というのを繰り返します。

しかし、直感が働くのはいいとして何に対して「これはちょっとどうかな」信号が灯るのかがよく分からないでいた。たまたまこんな一節を読んで、ああ、なるほど、と思いました。

ウソが本当らしくみえればみえるほど、美しく見えるというのが、ウソの法則であって、現実の世界では、本当のことというものは実は美しくないのが通例である。だから、いかにも本当らしくみえて、しかも美しい、というものがあったら、ウソだと決めてかかってよろしい。こんな簡単な原理がなかなか人にはのみこめず、現実の醜さに直にぶつからなければ、本当のところがわからない。映画界はこの一般心理にのっとって、醜い裏側を隠し、華々しいウソをつきつづけるのです。

三島由紀夫『不道徳教育講座』p.175 映画界への憧れ

この話は、当時の若者が映画界に抱く幻想について、例によって、逆説的に語られている一話です。ここでは一部を都合良く引用しました。ご勘弁を。