テクノロジーを隠蔽して誰もが使えるようにするのがインタフェースの役目だ

今年度のウェブ・デザインの間違いトップ10は、基本に忠実なウェブ・デザインに立ち返る必要性を明らかにするものとなった。メーリングリストやウェブサイト、カンファレンスに至るまで、インターネット業界では、新しく、魅力的な“Web2.0”機能に関する話題が尽きない。しかし、ユーザはテクノロジーなど気にしておらず、新しい機能など望んでもいない。

この文書、おおむね同意なんだけどどうしてもこのフレーズだけには納得がいかない。そこでブックマークに「この断定が好きじゃない」ということを書いたのだけど、これだけだとコメントの意思が正しく意図が伝わらないかもしれないのでここに記しておく。

見出しにあるとおり、"テクノロジーを隠蔽して誰もが使えるようにするのがインタフェースの役目"と常々思っている。Google の検索窓ひとつの、究極にシンプルな UI の奥にはご存知の検索テクノロジーが隠れている。iPod の、語らない秀逸な UI の裏には、小型化されたストレージやソフトウェアと同期を取るためのテクノロジーが隠れている。任天堂DSのタッチインタフェースの奥にも、携帯ゲーム機開発のノウハウの中から生まれてきた数多くのテクノロジーが詰まっている。

おそらくこの文書が言いたいことは、UI に知ったばかりのテクノロジーを、使いたいからという理由で施すのは良くない、ということを言わんとしているのだと思う。それは僕にも十分伝わっている。

しかし、それはテクノロジーを追求することをやめ、思考を停止することではない。シンプルで誰もが使えるインタフェースで、新しい体験を提供するために、裏に隠れたテクノロジーが何をするべきかを考える、それが技術者の役目だ。そうでなければ GoogleiPod任天堂DSも、生まれることはなかっただろう。テクノロジーの追求があったからこそ、機能をシンプルなインタフェースのみで提供することができたのだ。

確かにユーザーは新しい機能、テクノロジーを「望んで」はいない。しかし、人がその体験に驚き、もっとも大きな満足を得るのは、自分で望んでいることにさえも気づかなかった優れたものを手にしたときだ。先にあげた3つの製品はいずれもその代表的なものだ。そしてそれを生み出すにはテクノロジーが必要不可欠なのだ。