見慣れない場所の物語

「ここは見慣れない場所だね」
「そうですね」
「どうしようか」
「どうしましょうか」
「ちょっと周りを見てくるね」
「ありがとう。お願いします。」
「見てきたよ」
「どうでした?」
「怖いモンスターもいたけど、面白そうなものがたくさんあったよ。」
「怖いモンスターがいたのですか、それは怖いですね」
「怖いモンスターはいるけど、それより面白いものがいっぱいあったんだ。」
「怖いですねえ」
「もう少し詳しく知りたいね、もう少し見てくるね」
「ありがとう。お願いします。」
「もっと見てきたよ。」
「どうでした?」
「危ない罠もいっぱいあったけど、本当のことがいろいろ分かったよ。」
「危ない罠があるんですか、それは危ないですね。」
「でも、本当のことがわかるよ。」
「危ない、危ない」
「あちら側には、面白くて、楽しいこともあるし、本当のこともわかるんだ。」
「でも、危なくて、怖くて、うそもたくさんあるんでしょう?」
「一度君も行って見ればいいと思うよ。」
「君が教えてくれるから私はこちらにいたいと思います。」
「僕の言葉だけでは伝えきれないよ。」
「でも、私は怖くて危ないのでこちら側にいたいです。」
「そっか、じゃあ僕はまたあちら側に行って来るね。」
「はい。怖い怖い、危ない危ない。」

あちら側には本当のことを知っている人たちが集まりました。こうしてこちら側には本当のことはなくなりました。でも、こちら側にいる人たちはあちら側には行こうとしなかったので、本当のことがなくなっていることにも気づきませんでした。

おしまい。